黒手塚炸裂!一族の闇を暴く群像劇
こんにちは 小後舞真です。
漫画の神様と言われている手塚治虫さんは、生前多くの漫画を発表しました。
その中には、楽しい物語だけでなくダークな作品があることをご存じですか?
そういったダークな物語は、黒手塚作品と言われ手塚治虫ファンの中では特に人気があります。
そこで今回は、そんな黒手塚作品の一つ奇子の魅力を語りたいと思います。
※あくまで一個人の感想です。
奇子の概要とあらすじ
早速、奇子の魅力を語りたいところです。
しかし古い作品のため、内容を詳しく知らない人も多いでしょう。
そこでまずは、奇子の概要とあらすじを解説します。
奇子の概要
タイトル:奇子(あやこ)
著者:手塚治虫
出版社:小学館
掲載誌:ビックコミック
連載期間:1972年1月~1973年6月
巻数:3巻(手塚治虫漫画全集)
1970年代は、漫画の需要が高まり特に劇画ブームの真っただ中でした。
しかし手塚さんの絵は、代表作であるアトムやユニコ・不思議なメルモのようなかわいらしいタッチ。
そのため当時手塚作品の需要は、激減してしまいました。
それがきっかけで手塚さんは、スランプに陥ってしまいます。
その間苦肉の策で誕生したのが、この奇子という作品です。
漫画のダークな世界観と手塚さんの苦悩がリンクするような、ストーリ展開が特徴です。
2019年には、手塚治虫生誕90周年記念として奇子の舞台劇が行われました。
スランプ中でもこんな作品を描けることが凄すぎます
プロでも描くのに悩むときがあるんだね
奇子のあらすじ
東北地方の大地主の次男として、誕生した天外仁朗(てんげじろう)。
実は彼は、GHQのスパイとして活動していました。
ある日仁朗は、上司から政府反対運動に加担している男の命を奪うよう命令されます。
しかしその男は、仁朗の妹の彼氏でした。
葛藤がありながらも男の命を奪った仁朗は、血が付いた服を洗うところを末の妹・奇子に目撃されます。
天外当主は、家族に反政府の人間がいたことを隠すため妹を追放。
また、その事件の犯人(仁朗)を見た可能性がある奇子は、世間体のため土蔵に閉じ込められてしまいました。
そこでの生活は、4歳の時から23歳になるまで続きます。
そのため奇子は、世間知らずで大人の女性とは思えない行動を次々と起してしまうのです。
手塚治虫が、描く残酷で恐ろしい群像劇をお楽しみください。
奇子の魅力4選
手塚治虫作品・奇子の概要とあらすじについては、以上です。
鉄腕アトムなどの子供向け作品をイメージしている人にとっては、大きな衝撃があるかもしれません。
そこを踏まえた上で、奇子の魅力4選をご覧ください。
※一部ネタバレ有り。
魅力①一人の少女を取り巻く人間関係
奇子の魅力は、何と言っても一人の少女を取り巻く一族の人間関係です。
一人の少女は、もちろん奇子の事。
色欲におぼれて息子の嫁との間に奇子を授かった当主
世間体と財産目当てに嫁を差し出した長男
スパイ活動で人の命を奪った次男
成長した奇子に心を奪われ関係を持ってしまった三男
こういったことが起きているのに見て見ぬふりする母親
正直言って奇子に関わった大人たちは、この家族以外にもゆがんだ人が多い印象です。
この何とも言えない複雑でどす黒い人間関係が、漫画の世界に引き込まれる鍵になっている気がします。
どろどろとした人関係の物語が好きな人にはおすすめです
お嫁さんと女中さんが不憫だよね…
魅力②少女の心が残ったままの奇子
奇子の魅力は、やはり主人公の奇子にもあると思います。
特に少女の心を持ったまま成長してしまった彼女は、関わる人物だけでなく読者である私たちも魅了します。
物事の良し悪しの判断が難しく、自分が気に入った人物には大胆になってしまう奇子。
かわいそうに思える部分もありますが、だからこそ儚く目が離せないキャラクターになっていると思いました。
また現実ではありえない禁忌を犯す彼女は、どこか読者が内心思っている野望を再現しているのかもしれません。
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魅力③史実を元にしたストーリー
実は、事の発端となる殺人事件は、史実を元に作られているのです。
そのため、物語に深みがありより世界観に没頭できます。
一見難しい内容ですが、高校生くらいであれば理解できるくらい丁寧に説明されているのが特徴です。
もちろん漫画なので、絵で描かれているので分かる部分もあります。
しかしそれ以外にも、言葉選びが秀逸で初めて知る人にも分かりやすいのが特徴です。
元ととなった下山事件の概要は、こちらをご覧ください。
奇子以外にも下山事件を元にした漫画はたくさんあります
結構残酷な描写もあるから注意してみてね
魅力④音が聞こえてくるようなアクションシーン
奇子を巡って多くの人物が、取っ組み合いや命の取り合いをするシーンが定期的に描かれています。
それを見ると、音が聞こえてきそうなアクションシーンだなと思いました。
手塚さんは、ディズニーアニメに影響されておりそれを彷彿とさせる滑らかな動きが描かれています。
それがより、スピード感や緊迫感を出しているため次々とページをめくりたくなるでしょう。
またコマ割りなども斬新で、古い作品なのにどこか新しさを感じます。
奇子の気になる点
奇子の魅力については、以上です。
ただこの作品には、気になる点もありました。
それは、はっきり言うと感情移入・共感できるキャラが少ないと言う事です。
現在の面白いと言われる漫画は、キャラクターに魅力がありキャラ重視で物語が進みます。
一方で奇子は、史実を元に描かれているためストーリー重視で物語が進みます。
また、結末もそれでいいのかと思うような人物が生き残るため読後しばらく落ち着かないでしょう。
キャラに共感して読みたい人はしんどい部分があるかもしれません
人間の醜さや恐ろしい部分を一気に見せられた気がするよ
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ダークな手塚治虫の世界が読みたい人にはおすすめ
今回は、黒手塚作品「奇子」の魅力を語りました。
これまで子供向けの手塚作品ばかり見てきた人にとっては、衝撃的な事が多いでしょう。
しかし衝撃的だからこそ、印象深く多くの読者の心に残る作品となりました。
ダークな手塚作品の世界観が好きな人は、是非一度読んでみてください。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
★shogo★